ワンルームを「広く」「安全に」使う鍵は、動線をふさがない家具配置と、転倒・つまずきの原因を先に取り除くことです。
特に寝室(ベッド)→トイレ→洗面の夜間動線は最優先で確保し、手元灯や足元灯で明るさを補います。
本稿では、公的な設計指針の目安を踏まえつつ、無理なく取り入れやすい置き方の工夫をまとめました。
要点
- 動線幅の確保:通路は概ね80cm前後を目標。車いす回転の目安は直径150cm(将来の介助も見据えて余裕があれば確保)。
- つまずき・転倒の予防:段差解消、配線・ラグの端処理、滑りにくい室内履き。
- ベッド周りの整理:片側を壁から離し、立ち上がり側に40〜60cm程度の余白。必要に応じて立ち上がり補助(手すり等)。
- 夜間動線の安全:足元灯・人感センサー照明、呼び出しボタンの届きやすい配置。
- 家具の固定・火災対策:背の高い家具は固定、寝室には大型家具を置かない・火災警報器の点検。
動線づくりの基本寸法(目安)
- 通路幅の目安:日常の歩行なら約80cmを目標(屋内事情により確保できない場合は、角の出っ張りや配線を除去して実効幅を確保)。
- 方向転換の目安:車いすの将来利用も見据えるなら直径150cm程度の回転スペースが理想。難しい場合は140cm×140cm程度の方向転換スペースを検討。
- 手すり高さの目安:水平手すりは750〜800mmが一般的な基準(個々の身長・筋力で最適値は調整)。
出典:設計標準・指針等(リンクは末尾「参考情報」参照)。上記数値は一般的目安であり、住戸の条件・体格・介助方法によって最適値は異なります。
置き方の工夫(ワンルームを広く使うコツ)
- ベッドの向きと余白:片側を壁から離し、立ち上がる側に40〜60cmの通路。寝返り・立ち上がりの妨げになるサイドテーブルは小型・角の丸いものに。
- テレビ/収納の位置:ベッド正面の低い位置にまとめ、視線の先に出っ張り角を作らない。背の高い家具は壁面に固定し、寝床の転倒方向に倒れない配置に。
- 配線・ラグ:動線上に延長コードを這わせない。必要なら配線モールで固定。ラグは端部のめくれ防止と滑り止めを徹底。
- 扉の干渉:室内ドア・クローゼット扉の可動域を確保。開閉に家具が重ならないよう30cm程度の逃げを見込む。
- 見える収納:よく使う物は腰〜胸の高さに。踏み台が必要な上段収納に日用品を置かない。
夜間動線(寝室→トイレ→洗面)を最優先に
- 足元灯・人感センサー:暗所でのつまずきを防止。コンセント型や電池式をベッド脇/廊下曲がり角/トイレ入口に。
- 手の届く呼び出し:ベッドサイドに呼び出しボタンや携帯電話を固定できるトレーを用意。夜間も手探りで届く位置に。
- トイレ前の余白:扉前に80cm前後の立ち位置スペース。マット類は滑り止め付きに限定。
キッチン・洗面まわりの安全配置
- 火まわり:可燃物(布巾・紙類)をコンロから45cm以上離す配置が目安。調理中に席を離れない習慣づけと、タイマー活用。
- 床材とマット:水はねエリアは滑りにくいマット+四隅をテープ固定。段差は作らない。
- よく使う道具:上段ではなく胸の高さに集約。無理な背伸び・かがみ込みを減らす。
家具の固定と防災(地震・火災への備え)
- 背の高い家具を固定:L字金具・ベルト・ポールなどを併用し、壁下地に確実に留める。寝室には大型家具を置かないのが原則。
- 避難経路の確保:玄関から廊下まで段ボール・物置化を避け、常時通れる通路幅を保つ。
- 火災警報器:設置後10年を目安に本体交換。定期点検を行い、電池切れ・故障を防ぐ。
今日から使える簡易チェックリスト
- メイン動線(玄関→居室→ベッド→トイレ)に80cm前後の幅がある。
- ベッド立ち上がり側に40〜60cmの余白、足元灯を設置した。
- 背の高い家具は固定済みで、寝床側に倒れない配置にした。
- 延長コードやラグの端は固定し、段差・出っ張りを解消した。
- 火災警報器の点検・設置年を確認(設置から10年で交換目安)。
参考情報・リンク/免責事項
【設計指針・寸法の目安】
・国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」
・国土交通省「バリアフリー改修・改善のポイント」
・住宅性能表示(高齢者配慮等級)に関する基準抜粋(手すり高さ等の目安)
【防災・事故予防】
・内閣府(防災)「家具の固定と住まいの安全」
・東京消防庁「STOP!住宅火災(住宅用火災警報器)」
免責事項:本記事は公的資料の一般的な目安をもとに編集しています。住戸の規模・体格・持病・介助方法により適切な寸法は異なります。契約図面・取扱説明書・医療専門職の助言を優先してください。上記リンク先の具体的数値・条件は本文作成時点での情報であり、その後の改定がある場合は最新の公式情報をご確認ください。
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